現代イベンターに求められるスキルとは
フリーランスプロデューサーの末武(すえたけ)と申します。
前回は「時代に左右されない本質的なイベントの魅力」について書かせていただき、今回は『現代イベンターに求められるスキル』について、思っていることを書きたいと思っています。
■変化した求められるスキル
それでは、「イベントに求められるスキル」とは一体なんでしょうか?
所謂イベントというものは「目的達成のための手段の一つ」として行われるものですが、先ず、イベントには『開催する目的』があります。
例として音楽の場合は曲やアーティストのマーケティング、ブランドの場合は商品、セミナーの場合は情報・コンテンツ、交流会の場合は場を設けることでの料金収集など、イベントにはそれぞれの「目的」があって開催します。
そこで生まれる感動などの感情は、「イベントで作り上げる付加価値」として、イベントの質や評価を作るうえで『目に見えない指標』となるので、これも重要なファクターです。では、目的を達成するために「現役イベンター」に求められるスキルとは、具体的にはどういうスキルなのか。
制作スキルはもちろんですが、それは「マーケティング」に基づいて設計できるかどうか、に尽きると思います。
一言でいうと、マーケティングとは定義に諸説ありますが、私は「価値を届ける活動」として言語で捉えています。その中で、企業側の視点である4P(Product・Price・Place・Promotion)、生活者側の視点である4C
(CustomerValue・Cost・Convenience・Communication)、PESTやSWOT、エリア、ターゲット、WEBなど、といった分析が上げられます。
もちろん、主催なのか、受託なのか、で必要なスキルは大きく変わってきますが、現在では幅広くマーケティングの視点で思考できる人が求められるイベンターだと思います。
以前、受託の場合はマーケティングの分野は代理店やクライアントが考えるものとしてイベンターには特に関係ないスキルでしたが、資金面などの問題からあらゆる代理店が現在では入らないことも多く、その分そういった視点が喜ばれるようになりました。
受託側からすると「他にはない強み」として競合と差別化するにあたり、マーケティングの観点からの提案・アドバイスといったことは自分達を差別化する、といった観点で非常に重要になってきます。受託の場合でも、主催者と同じ意識を理解するうえで必要だと感じています。
■最も必要性を感じているスキル
上に挙げたマーケティング手法の中でも、最も必要性を感じているのが「4P」の中にある『Promotion』だと私は思っています。
本来「4P・4C」といった『マーケティングミックス』と呼ばれている“実行戦略”を作っていく中で、イベンターに最も求められるのは「Promotion」だと思っています。
この「Promotion」も言葉の定義は諸説ありますが、私は『購買を決断させるための宣伝活動』だと言語で捉えています。つまりPromotionを言葉にすると、マーケティングの「価値を届けるための活動」の中にある『購買を決断させるための宣伝活動』ということです。
そして、Promotionという大枠の中に、「広告・PR・販売促進・人的販売・イベント」など細かく分かれた実行戦略が含まれます。
このマーケティングの「Promotion」という大枠を網羅したスキルこそが、現代イベンターに最も必要なスキルではないかと私は考えています。
少し前に感じていた風潮では「面白い」「社会的価値」があるかないか、で判断されがちなイベントを少なからず見ましたが、この大枠を理解してイベントに取り組むことは非常に重要です。
例として、「広告」を考えるにはモラル・教養はもちろん、過去や現在のモラルを知ることで時代に合った適切な表現や、人間の習性や5感や感情、商品の機能などを考えます。
「PR」を考えるには企業として、ブランドとして、どう社会や関係者と良質な関係性を築き、ゴールを作っていくのか、という視点で考えます。
「販売促進」を考えるには商品などのベネフィットを熟知し、ユーザーのオケージョンまでイメージして計画を考えます。
「人的販売」を考えるには、広告などでは伝わりきらない魅力を伝えるためのコミュニケーション戦略を考えます。
私は「イベンター」の定義は全てを包括的に考え実行している人、という定義を持っています。
なので、イベンターの仕事は「イベントの制作」が仕事ではなく、『イベントをすることで社会に価値を作っている』人達のことをイベンターだと思っています。
そういう意味で、何かの目的があって、それを達成するためにイベントを行い、イベントから得た結果で未来を作っていく、これこそがイベンターの使命だと考えます。
そのためにマーケティング(価値を届けるための活動)の手法は「現代イベンター」にとっては必要なスキルと言えるでしょう。
■今後のイベンターの価値
依然、新型コロナウイルス感染症が蔓延する社会ではイベントの開催ができず、蔓延の元として扱われ、多くのイベンターが苦渋を強いられています。
日本はGWの緊急事態宣言中ですが、世界の情勢を見ると、大型のイベントが開催され始めてきたりと、少しづつですがイベントに回復の兆しが見え始めてきたと感じています。
一つ前の記事で書かせていただきましたが「リアルコミュニケーション」は人間にとってなくなるものではなく、今後コロナの束縛から解放された社会ではむしろ期待は今まで以上となり、大きく市場が動くと想定しています。
伴い、コロナ禍で形成された「価値の有無で人の行動が決まる」という点で、そのイベントは自身が行動して訪れるに相応しいものなのか、という評価はより一層厳しいものとなり、期待とは逆に今まで以上に内容が問われる、そんな風潮になっていくと推測します。
私はその評価を作れるスキルこそが、現代イベンターに求められるマーケティングのスキルであり、価値を高めていくための広い意味での「Promotion」ミックス、のスキルだと考えています。
明確な目的を設定し、それを行うことでどう在りたいか。どう思われたいか。社会に対するメッセージや自分達のスタンスを明確に決め、イベントを行うことで未来を築いていく。
分析と項目に沿った計画を行い、イベントの「付加価値」を高め、包括的にイベントをプロデュースしていくことが、今後のイベンターの価値だと考えています。
記事
末武 秀明 (すえたけ ひであき) / Producer
〈プロフィール〉
1978年生まれ。アートビジネス、イベント、広告プロモーションのフリープロデューサー。過去、渋谷区代官山の地域イベントなどを手がけたことが転機となり広告・イベント業界に転身。以降、大企業の様々なプロモーション案件に携わりフリーランスとして独立。企業のプロモーションサポートやコンサルティングを行いつつ、『社会に根付くアートの発展にコミットする。』というミッションステートメントでアートイベントなどのプロデュース活動を行っている。現在『アートと現代社会のコミュニケーション』をオン・オフラインで築く企画展「#CWA展」をローンチ中。
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