• HOME
  • BLOG
  • business
  • 「コロナ禍を進化のチャンスに。リアルの価値を追求する」 日本包装機械工業会・ 大岩将士氏に聞く|EVENTORS Future【第3回】

「コロナ禍を進化のチャンスに。リアルの価値を追求する」 日本包装機械工業会・ 大岩将士氏に聞く|EVENTORS Future【第3回】

 新型コロナウイルスの影響で激変するイベント業界で奮闘する次世代リーダーたちのリレーインタビュー。第3回は、国内最大級の包装産業の展示会「JAPANPACK(ジャパンパック)」を主催する一般社団法人日本包装機械工業会(東京都中央区)の大岩将士氏(31)に聞きました。

ジャパンパック、前回は464社・団体が出展

――日本包装機械工業会について教えてください。

「コンビニのお菓子やおにぎりから、薬やコンタクトレンズまであらゆる製品は包装されています。包装するための機械メーカーを中心に、包装資材などの関連産業、周辺機器メーカーなど、包装にまつわる企業・組織で構成する業界団体です。包装関連産業の調査や研究のほか、包装のスペシャリストの養成もしています」

――2年に1度開催される展示会ジャパンパックの主催者です。

「1964年に始まった、国内でも屈指の歴史のある展示会です。前回2019年秋は、464社・団体が出展し、4日間で延べ3万3539人にご来場頂きました。幕張メッセの開催で、展示規模は2292小間(2万628平方メートル)。実物の機械の展示も多いため、それぞれのブース規模が大きいのが特徴です。内容も時代を反映し、海洋プラスチックゴミなど環境問題の意識の高まりを受け、紙の包装や新素材の提案も多くありました」

次回開催は2022年冬 感染症対策の費用は課題

――次回は2022年2月に東京ビッグサイトでの開催を予定しています。

 「コロナ禍ですが、延期や中止は考えていません。ただ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期を受け、通常の周期(奇数年の秋)での開催はできませんでした。使用会場も西・南展示棟と、初めて尽くしでの開催になります。感染症対策とあわせて、開催に向けた準備を急ピッチで進めているところです」

――大規模な展示会は開催可能でしょうか。

 「感染症対策を徹底すれば、開催はできると考えています。すでに7月末に日本能率協会さんが『関西ホテル・レストラン・ショー』(92社出展、3日間延べ3581人参加)を成功させました。検温やソーシャルディスタンスなど空港と同じレベルの感染症対策を実施し、クラスター(集団感染)の発生もありませんでした。9月からは首都圏でも大型展示会の開催が徐々に再開しています」

 「一つの課題は、感染症対策にかかる費用です。大規模展示会となれば、その費用は数千万円にもなります。関西ホテル・レストラン・ショーでは、会場のインテックス大阪さんが会場費を半減させるなど支援に取り組みました。こうした大規模展示会は、老舗からベンチャー、関連企業が集う産業のインフラですから、行政側の支援がさらに拡充していくことを期待しています」

リアルはよりリッチな空間に

――展示会の産業はどう変わっていくと思いますか。

 「オンラインの取り組みが広がるため、リアルの部分は規模の縮小が避けられないと考えています。ただ、だからこそ、リアルはよりリッチな空間と位置づけられるはずです。臨場感や没入感、近くに人がいるという『隣人感』などはオンラインでは得られません。国内最大級規模の商談展示会のギフト・ショーさんなどはその典型で、バイヤーがギフトや雑貨品を実際に見て、触って、作り手に質問する。歩きながら新しい商材の発見も含め、オンラインで十分に代替するには、技術も環境もまだそこまで成熟していません」

――展示会の完全オンライン開催についてはどう考えますか。

 「たとえば、ギフト品と違って、モノがない情報商材であればオンラインだけで完結もできるのではないでしょうか。オンラインにも利点があり、場所にとらわれず、感染症の心配もなく、機密情報をやりとりするなら展示会の商談席よりも安全・安心という考えもありえます。あくまで、展示会で何を実現したいのか、顧客が何を求めているのかを主催者は追求するべきだと思います。オンラインという新しい“ツール”をどう活用するかは、その次のステップです。私たちのジャパンパックは、現状は、包装機械の実物がこれだけそろい、スピード感を持って商談できるリアルの開催に価値があると考えています」

セミナーはオンライン アプリも積極的に活用

――貴団体では、具体的にオンライン面の取り組みをどう進めていますか。

 「9月にオンライン会議システムを使ってセミナーを開きました。食品メーカーさんに登壇して頂いて、食品製造工場の課題や新技術を活用した取組みについてお話をしてもらいました。こうしたオンラインのセミナーは拡充してきたいと考えています。また、コロナとは関係ありませんが、スマートフォン向けの公式アプリもリリースしました。ジャパンパックの出展者や出展製品、セミナーなどの新着情報はもちろん、ビジネスマッチングを促進するようなサービスも実装した、工業会事業全体のポータルアプリです」

職種は多様 活躍できる場必ずある

――イベント業界の魅力は何でしょうか。

 「私自身は、これまで転職を重ね、この業界で営業や制作、運営など幅広く関わってきました。いまでは主催者側にいます。イベント業界に向く人はどんな人でしょうか?と質問されたときに思うのは、この業界で働きたいと思う気持ちがあれば、それだけでもう適正はあるのだということです。もちろん、イベントの開催に向けて納期の遅れは許されない厳しい業界ではありますが、やる気があれば、企画、空間作り、電機系の仕事、司会者、運営スタッフなど様々な職種があります。自分のスキルや性格を生かし、活躍できる場が必ずあります」

 「ジャパンパックは4日間の開催に向けて準備に2年、施工や搬入にも数日をかけて作り上げます。期間中には、何万人もの人がその場に集まります。けれど、イベント終了後には数時間もすると片付けを終え、空っぽになります。なんて刹那的なんだろうと思うのですが、そんなところが僕は大好きなんです。空っぽな空間とは逆に、心はチームで乗り切ったんだという大きな達成感に満たされているんですよ」

【プロフィール】大岩将士(おおいわ・まさし)1989年生まれ。千葉市出身。大学卒業後、食品卸売り会社に入社するもスピード退社。2012年に株式会社テンに転職し、イベント業界へ。その後、株式会社乃村工藝社に転社。イベントや企業ショールームの空間づくりを担当した。19年から現職で、マーケティング施策や制作管理、出展者対応を担当。日本イベント業務管理士協会(JEDIS)正会員。座右の銘は「当たり前のことを当たり前にする。そして新しい当たり前をつくる」

【団体概要】一般社団法人日本包装機械工業会 (https://www.jpmma.or.jp/) 。東京都中央区。大森利夫会長(代表理事)。1967年に包装や荷造り機械や器具の調査や研究、人材育成などを目的に設立した。展示会のジャパンパックのほか、人材育成を目的とした「包装学校」も主催している。問い合わせ先は電話(03-6222-2275)、FAX(03-6222-2280)

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。