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「展覧会はものづくり。感動を与えられる仕事」東京スタデオ・山田雄一取締役に聞く|EVENTORS Future〜イベント新時代への挑戦〜【第2回】

 新型コロナウイルスの影響で激変するイベント業界で奮闘する次世代を担うリーダーたちのリレーインタビュー。第2回は、ゴッホ展や恐竜展など国内トップクラスの展覧会を多数手がける株式会社東京スタデオ(東京都豊島区)の山田雄一取締役(56)に聞きました。

最後まで寄り添う、縁の下の力持ち

――御社の事業を紹介してください。

「東京を中心に全国の美術館や博物館などの展覧会の企画進行からデザイン、設営、展示までをサポートする事業をしています。皆さんも、もしかしたら足を運んで頂いたことがあるゴッホ展やルノワール展、恐竜展や人体展も私たちの会社がお手伝いをしてきました」

――記憶に残っている展覧会はありますか。

「今から27年ぐらい前(1993年)に、西武百貨店池袋本店の1Fにあったセゾン美術館で開催した『ジョージルーカス展』が忘れられません。「インディ・ジョーンズ」「スターウォーズ」シリーズの模型、コスチューム、オブジェ、スケッチなどを本国から持ってきました。ルーカス本人もオープニングには来るということで、連日徹夜でどうしたら映画の世界観をうまく表現できるのか全力で取り組みました」

「展覧会は、ディレクターさんの強いこだわりを、施工を担う大工さんなど協力会社の方々と連携しながら、作って、変更して、また作ってを繰り返します。最後まで寄り添って作り上げるので、できあがった時の感動は本当に大きい。作っているときは一生懸命ですが、展示が完成し、一段落して、誰もいない会場で、作品に向き合うと、いつもぐっと来るものがあります。あるとき、うちの社員がデザイナーに『東京スタジオさんには、愛があるよね』と言われたことがあるのですが、そんな会社であり続けたいと思っています」

コロナ禍、次のステップのきっかけに

――新型コロナの影響はどうでしたか。

 「少し遅れて影響がありました。春は新しい展覧会が多い時期で、3月ごろまでは仕事がありました。ただ、その後の緊急事態宣言で、オープン間際に展覧会そのものが中止となったりしました。その後は、展覧会は軒並み中止や延期になり、会社自体を完全に休みにせざるを得ない時期もありました」

「一方、次のステップに向かうことを考えるきっかけにもなりました。展覧会で培ったアートを使った空間づくりのノウハウを、個人の住宅の部屋づくりに生かせないかと検討しました。若いアーティストの作品を軸に、部屋の壁紙や家具を組み合わせてアートのパワーを感じられる部屋づくりを構想したりしていました」

ネットで下見、訪れて本物のパワーに触れる

――足元では、イベント活動も再開の傾向にありますね

 「展覧会も、7月に入って少しずつ動き始めています。前年に比べて落ち込んではいますが、各美術館への現場作業も出てきています。人数の制限や、間隔をあける表示など感染症対策の徹底も不可欠な要素になりました」

 「同時に、バーチャルで見られる展覧会も増えてくると考えています。カメラで写した展覧会会場を360度、パソコンなどで見られるしくみです。今後は、家でネットで見てみて興味を持ってもらい、本物を現場に見に行こうというスタイルが定着するかもしれません」

 「やはり、著名な美術品はもちろんですが、展覧会そのものも、作家さんがつくりあげたものであり、本物から出ているパワーがあるのだと思います。作家さんの気持ちが作品や空間に乗りうつっていて、一人一人にその気持ちが伝わるんですね。ずっと見ていたい作品や、ずっといたい空間があると思うのですが、それが本物に出会うことであり、展覧会の一番いいところだと思っています」

感動を与える仕事 女性社員が3割

――今の仕事の魅力はどこにありますか。

「展覧会はものづくりと同じです。クライアントさんやデザイナーさん、協力会社の方々とともに、協力しながら作り上げる。たとえば、恐竜の骨をただ置いておくわけではありません。どのように配置し、どう照明をあてるか、解説をどう添えるのか。そういったことを追求していくと、人々に感動を与える空間が完成します。恐竜展は、何度もやっていますが、内容が毎回進化しているんですよ。科学が発展し、恐竜には毛が生えていたと分かったら、それを反映していきます。見て、触って、体験する。人が集まって、気持ちも分かち合う。感動する経験を与えられる展覧会という場を、必ず残していかないといけないと思っています」

――徹夜も多そうですが、業界を目指す若い人たちに一言お願いします。

 「いえ、徹夜はだいぶ少なくなっています。昔は3K(きつい、きたない、危険)というイメージもあったとは思いますが、だらだら長時間働くのではなく、効率よくという働き方改革は、私たちの現場でも進んでいて、働きやすい環境が整ってきています。我が社は、かつては男性ばかりでしたが、今は社員45人ほどの3割が女性です。募集をかけると、8割が女性ということもあります。性別に関わらず、一人一人が個性を活かして活躍してくれています。私たちの仕事は花火職人と同じです。多くの人に見てもらって、感動を与える。そんな醍醐味(だいごみ)のある仕事にぜひチャレンジしてほしいと思います」

【プロフィール】山田雄一(やまだ・ゆういち)1964年生まれ。東京都江戸川区出身。日本デザイン専門学校卒業後、東京スタデオに入社。セゾン美術館や東京都美術館、国立博物館、国立科学博物館で、ジョージルーカス展、ゴッホ展、ルノワール展、人体展など大型展覧会を担当。座右の銘は「一期一会」

【会社概要】株式会社東京スタデオ(https://www.tokyo-studio.co.jp/)。本社は東京都豊島区。小澤洋一郎代表取締役社長。1945年に小さな看板屋としてスタートし、55年に東京スタデオを設立登記、70年代から美術館や博物館の展覧会の企画進行、デザイン、設営などを担うようになり、現在に至る。問い合わせ先は電話(03-3946-3481)、メール(info@tokyo-studio.com)

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