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「リアルの価値は不変。オンライン対応増やし、ハイブリッドで挑む」 トライフル・久野華子社長に聞く|EVENTORS Future〜イベント新時代への挑戦〜【第1回】

 新型コロナウイルスの影響で激変するイベント業界。次世代を担うリーダーたちは、この危機にどう立ち向かおうとしているのでしょうか。リレーインタビューを通じて、イベント業界の変わらぬ価値や魅力、そして、withコロナ時代の業界の展望について語ってもらいます。初回は、国際展示会などで外国語ができる人材の派遣をしている株式会社トライフル(東京都千代田区)の久野華子社長(32)に聞きました。

38カ国1600人の人材ネットワーク

――御社の事業を教えていただけますか。

「国内や海外の展示会に、外国語ができる人材を派遣し、コンパニオンや司会者(MC)、通訳として活躍してもらっています。現在、38カ国約1600人にまでネットワークは広がっています。ビジネス向けだけでなく、政府系トップクラスの国際会議で要人をもてなすこともあります」

――印象に残っているイベントはありますか。

「ベトナムのリゾート地で知られるダナンで、ある日本企業が社会貢献活動として、幼稚園をつくるという商談があり、そのときのスタッフがベトナム人でした。日本が好きで、日本語も上手。まさに、国を越えた架橋の存在となって、母国に貢献できる機会となり、非常に喜んでくれました。また、東京モーターショーでは、多様性を表現したいという依頼を受け、できるだけ多くの人種や国籍のスタッフに集まってもらいました。そのときの現場写真には、肌の色も年齢も性別も何もかもがそれぞれですが、みんなの笑顔は同じで、このビジネスをしていて本当に良かったと思いました」

――逆に、苦労した経験はどういったことですか。

 「文化の違いの調整です。日本企業と外国人スタッフ、海外企業と日本人スタッフでよくあるのですが、例えば、時間に対する考え方が違って、日本企業からはスタッフが時間になっても来ないとか、日本人からはブースに来ても、企業が来てないということがあります。お互いに悪気はなくても、外国企業だと10時からの展示会に11時に来るということが当たり前のようにあります」

 「私たちはそこに介在して、スムーズに仕事ができるようにするのが役割です。例えば、30分待っても来なかったら私たちに電話をくださいとスタッフに伝えたり、企業には集合時間を少し早めてもらって、点呼のあとに休息時間を入れてもらったりして、運用上のトラブルが起こらないように工夫しています」

世界一周で、起業を決意

――起業のきっかけを教えてください。

 「大学4年間はイベント業界のアルバイトに打ち込み、卒業後は通販会社でwebマーケティングをしていました。3年間働いて、お金を貯め、1年間かけて世界一周に行くことにしました。旅に出る前に、仕事を探したのですが、辞めると分かっていたら、バイトでも雇ってもらえません。そんなときに1日だけのイベントスタッフの仕事はあり、この自由度みたいなものが、とてもいいなと思っていました。英語が多少できたので、外国語対応の仕事を知ったのもこの時ですね」

 「バックパッカーで約50カ国を旅して、生まれた場所によって、ビザや所得の問題で、日本人のように世界一周が簡単にはできないことを知りました。トルコで仲良くなった子が「世界一周は私には不可能だ」と言った時の悲しそうな顔が忘れらません。国籍に関係なく、誰もが、自分らしく働ける会社をつくりたいという私の原点となる体験でした」

イベントは努力を出し切る発表会

――イベント業界の魅力は何でしょうか。

 「イベントが開催されるのは、1日間とか3日間だけです。でも、そのために、半年間ぐらいの準備期間があり、そこでは多くの人関わり、アイデアを出し合い、展示物を作り上げていく。がんばった成果が全部そこに詰まっている。発表会みたい場です」

ーーイベント業界で大切なことは何でしょうか。

 「イベントは華やかに見えますが、その日のために、誰もが努力しています。例えば、通訳なら語学力アップのために学校に普段は通ったり、展示会に合わせた語彙を身につけたり、司会者はボイストレーニングに通い、台本も覚える。モデルはウォーキングを習って、日々のダイエットも必要。イベントそのものも楽しくて私は大好きですが、そうした地道な努力の過程がとても大切だと思っています」

3月、イベントは全部なくなった

――コロナの影響は深刻ですね。

 「2月から仕事が徐々に減って、3月には全部なくなってしまった。さらに、イベントの主催者も、会場費の支払いなどで大きな損害を受けていて、私たちにまでキャンセル料の支払いができない状況だった。途方にくれたのですが、できることを考えました。一つは、クラウドファンディングで、お見舞い金を集め、スタッフに支払いました。確かにイベントはなくなったわけですが、日程を拘束していましたし、彼ら彼女らの生活のことも考えました。100万円ぐらいの資金が集まり、感謝しています。また、国に対策を求めるための署名活動もオンラインでしました」

――コロナでビジネスも変わりましたか。

 「withコロナ時代のニーズに対応し、オンラインに力を入れています。商材やサービスのライブ配信をお手伝いしたり、海外のイベント視察に行けないので、現地のうちのスタッフがイベントをみてきて、報告したりするサービスです。インフルエンサーをかませたり、オンラインとオフラインを組み合わせた展示会の提案もしています」

リアル✖️オンラインのハイブリッド

――今後のイベント業界の展望を教えてください

「コロナで、イベントのオンライン化が進み、場所を選ばずに参加できるなど便利さを知る機会にもなりました。著名スピーカーの基調講演などは、座席数の制限もないため、受講者数が増えています。広く情報伝達するには、オンラインにメリットがあります。一方で、展示会のリアルの価値は不変です。実際に、ものを触ってみたり、食べてみたりという商品価値の伝達や、感動を与えるようなPRは、リアルの方が圧倒的に優れています。展示会は、たまたまブースを回っていて、人だかりを見て入ってみると言うことも多々あります。雑談から商談に発展することもしばしばあります。今後は、オンラインとリアルのハイブリッド型で、業界全体を盛り上げていきたいと思っています」

【経営者プロフィール】久野華子(くのはなこ)。1988年生まれ、大阪府出身。学生時代にイベント業界に従事し、Webマーケティング会社、世界一周を経て起業。座右の銘は「生きてるだけで丸儲け」

【会社概要】株式会社トライフル東京都千代田区。2017年設立。ホームページ(https://www.tryfull.tokyo/)電話番号03-6912-2791

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