“現役イベンターのイベント業界 戦う365日” MERUが教える! イベント業界サンロクゴ(365)VOL.1
私はイベント制作会社で働いています。イベントとは簡単に言うと音楽ライブから企業の表彰式など、大きな会場を貸し切って行う催し物に関わる全てを指します。皆様が何気なく参加するこの『イベント』。実は私のようなイベント業界で戦う、多くのイベント人材(イベンター)が関わり、日々奮闘し、時に体調を崩しながらも作り上げた作品なのです。ここでは私が365日、日々戦う”イベント制作”という仕事が具体的に何をしているのかご紹介致します!
1. 制作ってなに?
みなさんテレビはよく見ますよね。実はテレビ制作とイベント制作はとても似ています。事実、テレビ制作会社からイベント業界に流れ込んでくる人はとても多いのです。私の会社も半分がテレビ制作からイベント制作へ移ってきた人で構成されています。まず、このような制作で最初に必要なものは企画書です。どんな内容にするか、メインは何なのか、ステージデザイン、キャスティング、イベントロゴデザイン、映像制作・・・と多岐に渡ります。この企画書が通れば具体的な作業に入ります。ここからは制作会社だけでは成立しません。ステージデザインは施工会社と、映像については映像会社と、キャスティングはいわゆる芸能事務所とつながりがあるキャスティング会社と、制作物はデザイナーと、といったように多くの会社との繋がりと信頼関係がないと成り立たないのです。そして制作会社として重要な制作があります。これは進行台本制作と運営マニュアル制作です。まずは進行台本から説明します。台本とはシナリオのことですね。ただ、テレビ制作と違いイベントは生ライブです。「TAKE 2」はありません。そのため台本は割と細かく丁寧に作ります。司会者やゲストのコメントはもちろん、どのタイミングでどの音楽を流すか、どのシーンで照明を入れるか、どのコメント後に映像を流すかなど事細かに記してあります。これによって出演者はもちろん、裏で支えてくれる音響・照明・映像などの技術スタッフも困りません。現場で困らないためのシナリオ作りが進行台本です。次に運営マニュアルです。運営と聞いただけではピンとこないと思いますが、先ほどの進行台本と比べて考えてみましょう。台本はあくまでショーの中身だけです。しかし運営マニュアルはイベント全体の概要を記載するものです。会場の詳細はもちろん控え室割、駐車場、設営撤去時のルール、受付フロー、スタッフの衣装、導線(人の流れ、通り道)指示など、ボリューム満載。来場者だけでなくイベントに関わる全ての人が困らないための一冊なのです。とても簡単ですがイベント制作とはこのような内容です。私たちは日々各セクションの会社と密に連絡を取りつつこのような仕事をしています。
2. イベント業界で働く人たち
イベント制作はたった数時間のために数ヶ月を要するヘビーな仕事です。大抵の人が10:00出社(これも業界の特徴で世間より少し遅めのスタートです)し、夜22:00なんてザラです。忙しい時は朝8:00くらいから稼働し終電まで、翌日現場に朝6:00入りなんてこともよくあります。つまりイベント業界の人たちは時間がないのです。 ということは現場で一緒に仕事をするスタッフへの台本説明やマニュアル説明をする時間はなるべく少なくしたい。現場ではクライアントからもしつこく修正を迫られることが多々あります。ではどうするか。『自分の制作ノウハウをわかってくれるスタッフで固めてしまう』というのが一番楽なのです。現場では阿吽の呼吸が必要です。いちいち説明する時間はもったいないのです。こうなってくると一人のプロデューサー(以下P)に付随していつもの制作メンバー、いつもの音響屋さん、いつもの照明屋さんとお馴染みのメンバーになります。これに味をしめたPは中々新しいことに手を出せません。だって楽ですから。このようにイベント業界の人たちは同じようなメンバーでぐるぐる現場を回っているような状態です。クライアントが違うけれど現場メンバーはほぼ同じ、というのはよくある話です。また、年齢層もかなり高めだと感じます。制作側としては失敗したくないのでベテランが良い。よって現場に来るのは大抵50代前後のおじさんたち。一応下を育てるために時々若手を連れてきますが次の現場では消えていたり。中々若手が続かないのも事実です。イベントのことを知らない人が多いのは、この閉鎖的なスタッフキャスティングのせいも大いにあるでしょう。
3. ベテランと若手の関係
どんなベテランも最初は若手で初心者でした。しかし年月を経て、だんだんベテランの域に入っていくと任されるのが若手育成。いくら閉鎖的な業界でも、常にイベント業界は人手不足ですから一応隙間時間を塗って採用を行なっていたりします。しかしやっと若手が入社しても教えてくれる人がいなければ使い物になりません。これがイベント業界の難点です。みんな時間がないから若手に構っている時間がない。そしてある日突然現場に連れてこられて怒鳴られる。。。。 これは私も経験があります。いきなり『このシーンバミッといて』と言われても分かりませんよね。そもそもバミリって何?というのが普通です。どの業界もそうですが、暗黙の了解のようなものが多数存在します。バミリもそうですが、『これとこれをテレコにする』や『サブロク持ってきて』『このイス笑っちゃって』など普通の人からしたらポカーンとなるようなフレーズばかり。こんな現場にいきなり放り込まれる新人の辛さといったら・・・。また、これは私の経験ですが、ある制作でクライアントも直属のPもちょっとクレイジーな案件で心身ともに参っていた頃がありました。そんな時同じ会社のメンバーで飲みにいった時の話です。ある先輩から、『最近あのPにやられてるみたいだけど大丈夫?』と心配されました。私は同じ会社なので少し愚痴を吐く程度で留めましたが、その場に同席していた別のPが言いました。『Pが気を使うD(ディレクター)やAD(アシスタントディレクター)ってありえなくない?』
・・・・・・・・・・・・・・これがイベント業界です。
確かにそうなんです。Pが使いづらいディレクターは使ってもらえません。つまり多少の理不尽を受けても続けたいかどうか自分に問わなればなりません。ちなみに、ベテランクラスの方からよく聞くのが、『最近は男の子より女の子の方が根性あるからな~』です。着々と若手女性が増えてきているのは社会的にも良いところですね。同じ女性として、女性の制作と出会えると嬉しく思います。
4. イベント業界、やりがいはある?
満足度はとても高い仕事だと思います。各セクションのベテランたちをまとめ、最高のタイミングで音楽や照明、映像が決まり、時に涙を流している観客を見ていると頑張ってよかったと心から思えます。ただ、この業界で頑張るには目標が必要です。働く時間や人たちは理不尽です。それでも頑張るには『こうなりたい』と思える人に出会えるか。私は初めての現場で泣きっ面をかきましたが、生で会場を見渡した時トリハダが立ちました。あれほどクリエイティブで感動的なイベントは初めて見ましたし、それを一から作り上げるプロデューサーを心から尊敬しました。 あなたもそんな人に出会えればきっとこの業界にハマっていくでしょう!ここまでイベント業界のことを説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
最後に私からアドバイスです。
この業界はもがきながらも、自分なりの楽しみを見つけることが長続きの秘訣です。ちなみに私の楽しみは出張先のご当地グルメをお腹いっぱい食べることです。これからイベント業界へ入ろうと考えている人、またはもう入っているけれど右も左も分からない状態の人など、様々な人の役に立てればと思います!
<プロフィール> ペンネーム:MERU(メル) 年齢:27歳女性 業種:イベントD(進行・運営)、企画書・台本・マニュアル制作、入稿データ制作、デザイン関係制作、英語対応可 業界歴:3年 活動エリア:東京 家族:旦那と共働き 所属組織:10名未満のベテラン揃い スキル:制作に必要な知識に加え、デザイン関係(AI,PSD操作)、英語対応といった周りにない+αスキルでしがみついている チャレンジしたいこと:時間効率化で副収入を得ること。仕事で海外に行くこと。 前職:ボランティアで2年間海外の学校で教師をしていた 悩み:子供が欲しいが仕事も楽しいので辞めるタイミングが分からない。よってフリーになっても仕事がもらえる関係値を作りたい
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