盗んで盗ませる?「イベント人材」不足解消のカギは“やり甲斐”を感じる環境づくり
にぎやか、楽しい、ためになる、そんな明るいイメージで人を呼び寄せる「イベント」。近年は個性的なイベントが次々に生まれ、ビジネスからエンターテイメントまで幅広く新しい可能性を見せつけています。
若者を中心に関心が高まるイベント業は、メディアに注目される機会も多く、たくさんのヒト・モノ・コトが動く世界。しかし業界は今、華やかさの裏で深刻な「人材不足」に悩まされています。一見、人材の宝庫のようにも思えるこの業界で、なぜ人材が不足しているのでしょうか。
イベントの人材不足が続く3つの原因
たくさんの人と力が結集するイベントにおいて、注目すべき人材不足の原因はこの3つ。
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少子高齢化が進み、日本の人口そのものが減少している
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すでにあるスキルやノウハウが共有されていない
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若手が育たない
残念ながら人口減少は、私たちが今すぐどうにかできる問題ではありません。考えるべきは、限りある人数で最大限の力を発揮できる人材をどう増やすかです。今のイベント業界は人のつながりも情報も閉鎖的で、すでに能力を持つ人のスキルやノウハウでさえ十分に活かされていません。
違う役割同士の理解を深め、それぞれを活かし合い、次世代に継承していくこと。人のつながり、技術、知識、アイディアを業界全体で底上げしていくことが人材不足解消の急務なのです。
最大のポイントは若手がやり甲斐を感じられる環境を整えること
そもそも人材不足はイベント業界に限ったことではありません。中小企業基盤整備機構(中小企業アンケート調査報告http://www.smrj.go.jp/doc/org/20170508_info01.pdf/2017年5月8日時点)が行ったアンケートでは、74%が人手不足を訴え、そのうちの20%が「人手不足が深刻だ」と回答しています。
人材不足に悩む企業の多くは若手を育てようにも育てられない、離職率の高さを問題視しています。逆にいえば離職率の低い企業は人材不足に悩まされないのです。では実際に彼らはどんな理由で仕事を辞めるのでしょうか?
それは「仕事にやり甲斐を感じないから」です。もちろん給与や労働時間なども原因のひとつではありますが、給料の低さと離職率は必ずしも比例しません。そうにも関わらず、イベント業界も「キャリアアップを見いだせない」「チャレンジする機会にめぐまれない」と辞職する若者が後を絶たないのです。
イベント業は個々の能力を自由に生かせる職業です。既存のやり方はあまり存在せず、オリジナリティが重宝されます。一方で、その独自性を大切にするあまり情報やコミュニティがオープンにされていない傾向があります。一人のスキル・ノウハウはその人だけのものであり、別の誰かが発展させることは難しいのです。となれば、必然的にスキルを持つ人に仕事が集まり、スキルを持たない若手のチャンスは少なくなります。
時代が変わっても人々を魅了し続けるパブロ・ピカソの言葉にこんなものがあります。
「凡人は模倣し、天才は盗む」
凡人か天才かはさておき、この言葉は、新たな価値観はマネたものを組み合わせていくことで生まれる(模倣=ただのコピー、盗む=オリジナリティに変える)ことを教えてくれています。世界の成功者といえるスティーブ・ジョブズ(Apple社・元CEO)やフランシス・F・コッポラ(映画監督)もまた、これまでに多くを盗み、自分が盗まれる人間になることを誇りに思っているといいます。
多くの優れたものが、「マネ=既存のノウハウ」をベースに進化してきたものなら、優れた人材を育てるために若手がマネできる環境を整えることが先人の務めでしょう。どんな分野にもプロフェッショナルやベテランは存在します。「イベント」という共通目標をかかげて能力を開示し合い、相手を知ることで自分なりの新しいやり方を見いだしていく。これは教えられる側だけでなく、教える側がさらに飛躍するチャンスにもなるはずです。
教える側も教えられる側も楽しんで伸びる
すでにある能力を共有しながら人材を育成し、業界の可能性を広げていく方法にはどんなものがあるのでしょうか。取り組みやすい順にその方法の一例をご紹介します。
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インターネットで自分のスキル・ノウハウを発信し、同時に情報を集める
この情報社会で、イベント業界はオープンになっている情報が圧倒的に少ないです。個人のブログやSNSで自分のノウハウを発信していくことは、イベント業を志す若者の夢につながるでしょう。このサイトでもイベントお役立ち情報を配信していきます。
ただし、インターネットはお手軽なぶん人とのつながりが希薄。意見交換したとしてもどこか現実味がなく、一歩踏み込むのは難しい傾向があります。また、ネット検索は自分のほしい情報(入力したワード)だけを検索するため、その内容の正否を誰も教えてくれないということを理解しておきましょう。
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イベント業界の交流会に参加する
他業種交流会で新たな可能性が見いだせるケースもあります。ですが、今何をすべきか迷っている人は、まず同業種と交流することがおすすめ。現状の把握や今後の方針、どんな人と出会っていくべきかのヒントが得られるはずです。
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交流会を開催する
どんな人と出会い、どんな人とどんなイベントをつくっていきたいのか。自ら動く人の元には、同じように動きたい人が集まってきます。活発な意見交換や情報交換が起こり、想像もしなかったアイディアが生まれるでしょう。自ら交流会(イベント)を開催すれば、イベント業を実践で学べて一石二鳥。
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人が集まるコミュニティやプラットフォームをつくる
3と似ていますが、単発の交流会ではなく継続的に誰もが集まれる環境をつくりましょう。最初は「月に1回飲みながら夢を語る仲間を集める」くらいで大丈夫。ゆるい環境のほうが人は集まりやすく、意見も言いやすいのは何だって同じです。
会話を楽しんでいるうちにベテランは若手の斬新な発想に刺激され、若手はベテランからそれを実現するためのノウハウを教わる。その小さなつながりが、業界全体の底力になっていきます。
この他に、「集まる場所が持つ力」も実は大切。ザ・事務所のような場所で会議をするより、例えば古民家の縁側で模造紙にアイディアを出し合ったり、大きな公園の芝生の上で白熱トークを繰り広げたりしたほうが、想像力も働きそうですよね。誰でも楽しいことなら無我夢中になれますし、どんな苦労も苦労と思わず乗り越えていけるはず。「楽しむこと」は、能力や成果を伸ばすための重要な要素になりえるのです。
また、用途に合わせてフリースペースや個室を使い分けられるコワーキングスペースの利用もおすすめ。同じ空間にさまざまな業種の人が集っている環境も、新しいアイディアの刺激になります。人の出会いが多ければ、それだけ人脈も広がるもの。いざイベントを主催しようと思ったとき、必要な人材の確保にもつながるでしょう。
人は人とのコミュニケーションの中で第三者の目線を学び、成長していきます。豊かな発想が求められるイベント業界こそ、ティール組織のようにフラットで自由な環境が求められているのかもしれません。
最後に
育成において「自分たちはこうやって学んだ」という指導は、必ずしも次代を担う若者に適した方法といえなくなりました。学校教育もIT化が進み、時代のニーズは与えられる情報の吸収から、膨大な情報の中から自分に合った方法を選択する情報の活用に変化しています。
イベントは一人より仲間とつくりあげたほうが圧倒的に楽しいもの。先人が道筋を示し、導いてあげることで若手の拓く未来が広がり、結果的に業界の未来が拓ける。忙しさに追われると忘れがちな「育てる」「見守る」という気持ちを、人材不足解消のためにも、業界の未来のためにも大切にしていきたいですね。
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投稿|EVENTORS 365[イベンターズ サンロクゴ]
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